さて、いよいよ来る10月から消費税が10%に増税されます。
現行の8%になったのが2014年(平成26年)の4月ですので、5年半ぶりの消費税増税ということに・・・!
そこで当サイト(カードローンの巨匠)では、ファイナンシャルプランナーを中心とした専門家の方々に、消費税増税に関するお話を伺いました。
第一弾は、ライフプランニングや住宅ローン等を専門に活動する田中裕晃さんに「増税前に抑えておきたいポイント」について解説してもらいます!
【今回増税について教えてくれた方】
CFP®・1級ファイナンシャルプランニング技能士、公認不動産コンサルティングマスター、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー、マンション管理士、賃貸不動産経営管理士と幅広く活躍している、田中裕晃さん。
HP:株式会社大峰
専門分野はライフプランニング、住宅ローン、不動産投資、相続対策、など。執筆、相談業務を中心に活動中。
住宅取得によって家計が破綻することのないよう、背伸びしない家計の構築を支援する。
不動産取引の実務経験や知識を活かし、住宅の取得、住宅ローンの組み方から、売却、買い替え、相続不動産の扱い、さらには不動産投資まで、不動産を中心とした問題を得意とする。
はじめに
消費税が初めて導入されてから30年が経ち、税率も3%、5%、8%と徐々に引き上げられてきましたが、従来は課税対象のものであれば一律同じ税率が適用されてきました。
それに対し、今回の増税の最大の特徴は「軽減税率」の導入。一言で言うと、品目によって適用される税率が変わるということです。
実際に消費税を納税する事業者にとって税務処理が煩雑になることはもちろんですが、消費税の負担者である一般消費者にとっても慣れるまでは時間がかかるでしょう。
本稿では、軽減税率の概要を再確認するとともに
- 消費税増税前後でなにが変わるのか
- 消費税増税にあたって知っておくべきこと
について、一般消費者にとって必要と思われるポイントをご紹介します。
軽減税率のしくみ
軽減税率とは、消費税増税に対する消費者への負担を軽くするための措置で、対象品目については現行の8%が適用されるという制度です。
厳密に言うと、消費税は消費税と地方消費税で構成されており、現行の内訳は
- 消費税率が6.3%
- 地方消費税率が1.7%
であるのに対し、軽減税率適用品目では
- 消費税率が6.24%
- 地方消費税率が1.76%
と、合計は同じでも割合は微妙に違いますが、消費者にとってはあまり関係のない話でしょう。
以下、少し詳しく見ていきましょう。
軽減税率対象①飲食料品
食品表示法に規定された飲食料品のうち、酒類を除いたものが軽減税率の対象とされています。
具体的には、
- 米穀や野菜、果実などの農産物、食肉や生乳、食用鳥卵などの畜産物、魚類や貝類、海藻類などの水産物
- めん類、パン類、菓子類、調味料、飲料等、その他製造又は加工された食品
- 添加物(食品衛生法に規定するもの)
- 一体資産のうち、一定の要件を満たすもの
が挙げられます。
④の一体資産というのは、オマケ付きのお菓子のように、食品と食品以外のものが一体となっている商品を指します。
また一定の要件というのは一体資産の価格が1万円以下で、かつ食品の価格の割合が全体の3分の2以上を占めるもの、またバラ売り表示(オマケとお菓子が別々に値付けされているなど)がされていないもの、という内容です。
食料品での注意点は、酒類は除外されているということ、また医薬品や医薬部外品も対象外であることです。
ちなみに、医薬品や医薬部外品ではない栄養ドリンクは食料品として軽減税率の対象とされます。
外食は軽減税率の対象外
同じ食料品でも、外食の場合は軽減税率の対象外となります。
つまり、レストランなどの飲食店やフードコートで食べる場合は、消費税率は10%が適用されます。
飲食店で同じものを購入した場合でも、テイクアウトするものについては8%が適用。
では、テイクアウトすると言って購入し、実際には持ち帰らずに店内で食べた場合はどうなるのでしょう。
国税庁の見解として、「飲食料品を提供する時点で顧客に意思確認を行うなどの方法により判定する」となっていますので、購入時にテイクアウトと伝えれば軽減税率の対象となるということでしょう。
道義的問題はさておき、購入後に意思が変わったと言えば課税逃れもできそうですが、実際の運用がどうなるのかは各飲食店に委ねられるということでしょうか。
なお、外食と違い、ケータリングは軽減税率の対象外ですが、小中学校の給食や老人ホームでの飲食料品の提供は、一定の基準を満たすものについては軽減税率の対象となります。
軽減税率対象②新聞
新聞も軽減税率の対象とされていますが、その新聞が週2回以上発行されていること、また定期購読契約によること、が適用条件とされています。
つまり、週1回発行のものは対象外ということです。
また、週2回以上発行されている新聞でも、コンビニ等で購入する場合は定期購読契約に該当しませんので軽減税率の対象にはなりません。
スポーツ新聞や業界紙、日本語以外の新聞も上記条件を満たせば軽減税率の対象となりますが、電子版の新聞は対象外です。
あくまでも紙ベースの新聞に限定されています。
軽減税率の対象はかなり限定されています。
対象品目以外のもの、例えば家電や家具、住宅などは増税前に購入すべきなのでしょうか。
本稿の執筆時点では増税時期が目前に迫っていますので、10月までに住宅を購入となるとかなりタイトなスケジュールになりますが、まだ不可能というわけではありません。
駆け込み購入をすべきかどうかの判断材料として、ここからは、増税後の緩和措置について見ていきましょう。
キャッシュレス決済と消費者還元事業
対象となる中小・小規模事業者からキャッシュレス決済によって商品やサービスを購入した場合、最大で5%のポイント還元がなされるという制度です。
よくわからない言葉が並んでいると思われたかもしれませんので、もう少し具体的に見ていきましょう。
キャッシュレス決済について
最近流行りの言葉ですが、文字通り、現金(キャッシュ)を用いない(レス)支払い(決済)方法を指します。
具体的には、電子マネー、デビットカード、クレジットカード、QRコードなどがあります。
ポイント還元の対象となるのは経済産業省に登録した決済事業者のキャッシュレスサービスに限定されていますが、
▼電子マネー
- nanaco
- WAON
- 楽天Edy
▼クレジットカード
- VISA
- Mastercard
- JCB
- American Express
▼QRコード
- Pay Pay
- Line Pay
- 楽天Pay
など、主要な事業者は既に登録されています(2019年8月2日時点で449社が登録されており、今後も登録業者は増加するでしょう)。
ご自身が利用されているキャッシュレスが対象かどうかは、経済産業省の事業者リストで確認することができます。
対象となる中小・小規模事業者は?
対象となる中小・小規模事業者は、業種ごとに資本金や従業員数の上限が定められており、基準を満たす事業者のうち、経済産業省に登録した事業者を指します。
例を挙げるなら、サービス業であれば
- 資本金5000万円以下
- 従業員数100人以下
という基準になっています。
経済産業省の「キャッシュレス・消費者還元事業」のホームページで登録業者の一覧が確認出来ますが、2019年7月30日時点では239,273社が登録されており、業種別の内訳は小売業が63%、飲食業が13%、その他サービス業が24%となっています。
都道府県ごとに加盟店がリスト化されていますので、お住まいの地域の登録店を確認すると良いでしょう。
最大で5%のポイント還元される
ポイント還元の方法については、各キャッシュレス事業者によって異なりますが、クレジットカードの場合は請求される利用代金からポイント分を相殺、デビットカードであれば銀行口座にポイント分を後日返金、電子マネーなどは利用残高にポイント分がプラスされる、というのが主流のようです。
「最大で5%」という表現に関して具体的に言うと、中小・小規模事業者が経営する小売店、飲食店、宿泊施設については5%、コンビニ、飲食店、ガソリンスタンドなどのフランチャイズ店は2%となります。
対象店舗には経済産業省が作成するポスターが掲示されることになっていますので、どの店が何%のポイント対象かは一目でわかるようになります。
還元の上限
キャッシュレス決済事業者ごとにポイント還元の上限を設けられる予定ですが、クレジットカードの場合は1ヶ月のポイント上限を15,000円(5%であれば利用額30万円)、電子マネーはチャージ限度額まで、と発表している事業者もあります。
経済産業省が上限規定を設けているわけではなく、あくまでも事業者の自主規定ですので、各社ばらつきが出る可能性もあります。
現時点では未発表の事業者も多く、今後の動向に注目したいところです。
還元の実施時期
増税開始の2019年10月1日から、2020年6月30日までの9か月間とされています。
対象外となる商品、取引
切手や印紙、商品券、プリペイドカードなどの換金性が高いもの、収納代行、代金引換サービスに対する支払い、もともと消費税がかからない取引などは、ポイント還元の対象から除外されています。
また、自動車や新築住宅についても除外対象とされていますが、ポイント還元とは別の対策が講じられています(そもそも住宅をキャッシュレスで買うことは無いでしょうが)。
以上が「キャッシュレス・消費者還元事業」という名のポイント還元制度の概要です。
住宅ローン控除の拡充
住宅ローンを組んで住宅を購入する場合、一定の条件を満たせば住宅ローン控除が使えます。
一定の条件というのは、細かく述べるとかなりの分量になってしまいますので詳細は省きますが、例えば自己居住用であるとか、住宅ローンの返済期間が10年以上であるとか、年間所得が3000万円以下であるとかいった内容です。
消費税増税前の住宅ローン控除は、下記のようになっています。
消費税が課税される住宅の場合、
- 通常の住宅:「年末時点での借入残高の1%」を10年間
- 質の高い住宅:「年末時点での借入残高の1%」を10年間
消費税非課税住宅の場合は、
- 通常の住宅:「年末時点での借入残高の1%」を10年間
- 質の高い住宅:「年末時点での借入残高の1%」を10年間
となっています。
※質の高い住宅というのは、「認定長期優良住宅」や「認定低炭素住宅」を指します。
これに対し、消費税増税後(10%が適用される住宅)は、11年目から13年目までの3年間、「年末時点での借入残高の1%」もしくは「建物購入価格の2%÷3」のどちらか少ない金額が所得税、住民税から控除されます。
借入残高と建物購入価格は4000万円(質の高い住宅は5000万円)を限度としますので、フル活用できるとすれば3年間で799,800円(質の高い住宅は999,900円)の減税ということ。
建物価格に対する消費増税分(2%分)が、3年にわたって返ってくるというふうに考えられますので、実質消費税増税の影響がないということになります。
消費税非課税住宅の場合には適用されない
当然ですが、これは消費税非課税住宅の場合には適用されません。
住宅の購入に消費税がかかるかどうかという点については、土地は非課税、建物は課税対象というのが原則ですが、売主が事業者ではなく、事業として売却するのでない場合は特別に建物も非課税になるのです。
具体的には、個人の売主が自宅を売却する場合等が消費税非課税取引に該当します。
売主が個人でも投資用の物件であれば課税対象となりますし、中古物件であっても売主が不動産業者などであれば同じく課税対象となります。
新築であれば消費税課税取引でしょうが、中古の場合は消費税が課税されているのか、また住宅ローン控除が使えるのかどうかについて、あらかじめ不動産業者に確認しておくと良いでしょう(価格表示は消費税込みになっていることがほとんどです)。
以上が住宅ローン控除の拡充部分についての概要です。
紙幅の関係でかなり端折った書き方になってしまいましたが、こういう減税制度があるんだということを知っておいて下さい。
【最後に】消費税増税を迎えるにあたって
ご紹介した通り、消費税増税後も各種還元、減税措置がありますので、すべてにおいていきなり負担が増えるというわけではありません。
ポイント還元制度をうまく使えば、増税前より実質負担が減る場合もあるでしょうし、住宅にしても住宅ローンの拡充制度を利用できる環境であれば、負担は変わらないと言えます。
また、軽減税率対象品目であれば現行と同じ税率で買い物ができます。
反対に、郵便などのインフラの値上げやATM手数料などにかかる消費税率の値上げなど、避けようのない部分での負担増が出るのも確かです。
今現在発表されている各種減税措置の概要を把握することはもちろんですが、今後も景気動向によって様々な優遇措置が打ち出される可能性も・・・。
キャッシュレス事業者などの民間事業者がキャンペーンを展開することも考えられます。
しっかりとアンテナを張って、オトクな情報を逃さないようにしましょう。