2019年10月から始まる消費税増税。

当サイト(カードローンの巨匠)では、5回にわたってファイナンシャルプランナーを中心とした専門家の方々に、消費税増税に関するお話を伺いました。

第二弾は、ライフプランニングや住宅ローン等を専門に活動する村井英一さんに「消費税が10%になるにあたっての対策」について解説してもらいます!

【今回増税について教えてくれた方】

【寄稿依頼】村井英一さんのプロフィールイラスト

ファイナンシャルプランナーとして、大手証券会社で個人顧客の投資相談業務を長年行う村井英一さん。

HP:家計の診断・相談室

ファイナンシャルプランナーとして独立後は、資産運用に限らず、家計の見直し、住宅購入、老後資金など幅広い相談を受ける。

特に、長期にわたる家計のシミュレーション分析を得意とする。

「働けない子どものお金を考える会」に参画し、親子2代にわたる家計の分析を行っている。

【はじめに】今までと違う消費税の引上げ

いよいよ10月に消費税が引上げされることになりましたね。今まで2回、計4年間も延期されていましたが、今度ばかりは実行されることになりました。

消費税は3%で始まったのが、5%、8%と引き上げられ、今回の引上げで3回目となります。

ただ、今回の引上げは今までとは異なります。

軽減税率の導入

軽減税率」というものが導入され、10%と8%の2種類の税率が共存するようになります。

飲食料品と新聞だけは8%に据え置かれますが、その他のものは10%に引き上げられます。

新聞は、「週2回以上発行されるもので、定期購読契約に基づくもの」となっており、配達される新聞の購読料は8%ですが、駅の売店で買う場合は10%となります。

線引きが難しいのは飲食料品です。

■軽減税率(8%)が適用されるもの

  • 肉や野菜
  • 調理された食品の持ち帰り
  • 出前や宅配
  • テイクアウト

■増税(10%)されるもの

  • 酒類
  • 外食
  • ケータリング

基本的に自宅へ持ち帰るものは軽減税率が適用、外で食べるものは増税されるもの、といったイメージです。

コンビニエンスストアなどでは、購入した食品を店内で食べられるようにテーブルやいすが用意されていることがありますが、そこで食べる場合は8%ではなく、10%が適用されることになります。

これでは、レジで混乱するのではないかと心配されますが、国税庁は「イートインコーナーを利用する場合はお申し出ください」などの掲示をしていればそれでよいとしています。

さらに、店内での食事と持ち帰りで、もともとの価格を変えて、消費税込みの価格を同じにしてもよいとしています。

【対策】新しくできる優遇策を活用する

今回の消費税引き上げのもう1つの特徴は、増税で消費が冷え込まないように、還元策を手厚くしている点です。

このような還元策をうまく活用することが、増税へのお得な対策となります。

①キャッシュレスポイント還元制度


すべての人が対象になる還元策としては、「キャッシュレスポイント還元制度」があります。

10月から2020年6月までの間、対象の店舗で、電子マネー、プリペイドカード、クレジットカード、デビットカード、QRコードなどで買い物をすると、購入金額の5%または2%がポイントで還元される制度です。

それぞれ、カードによってポイント還元が設けられていますが、この期間だけはそれとは別にポイントが付与され、その後の買い物で使うことができます。

これは、消費税引き上げ後の景気対策とキャッシュレス決済の促進を兼ねた施策で、ポイントの原資は税金です。

消費税が2%引き上げられても、5%が還元されるのであれば、戻ってくる金額の方が多くなります。

 

ただ、対象となる店舗は、この制度に登録をした中小・小規模店舗(この制度のロゴ入りステッカーが貼られています。)のみで、そのうち大手フランチャイズ加盟店は還元率が2%となっています。

どのお店でもカード払いをすれば5%が還元されるというわけではありませんので、ステッカーを覚えておくとよいでしょう。

②プレミアム付き商品券

収入が少ない人や子育て世帯を対象に、「プレミアム付き商品券」が発行されます。

2万5,000円分の商品券が2万円で買えますので、25%もお得になっています。

収入の面から対象になるのは、2019年度に住民税(均等割)が課税されていない人(住民税課税者に扶養されている人、生活保護の人は除く)です。

家族全員が住民税非課税であれば、子供も含めた全員が対象に。

 

自治体によって異なりますが、11月頃までに市区町村へ申請をすると、購入引換券が送られてきます。

子育て世帯では、9月30日時点で3歳未満の子供が対象。こちらは申請をしなくても購入引換券が送られてきます。

 

8月以降に生まれたお子様の分については少し発送が遅くなります。↓

例)夫婦ともに住民税が非課税で、2歳と0歳の子供がいる場合

家族4人が非課税で対象となり、さらに2人の子供が対象となるので、計6人分のプレミアム商品券が購入できます。

15万円分の商品券が12万円で買えますので、3万円もお得になります。

ただし、プレミアム商品券が使えるのは、2020年3月末までの自治体が定める期間のみ。

そして、使えるのはお住いの自治体の店舗となります。

購入引換券が届いたら、プレミアム商品券を購入します。(市区町村の窓口や郵便局で販売される予定です。)

購入は5,000円単位ですが、商品券自体は500円単位ですので、毎日の買い物など、小口の買い物で使うことができます。

お釣りは出ませんので、500円超の買い物で使うことになります。

 

ただし使える期間はそれほど長くはないので、くれぐれも使い残しとならないように、早めに使っていく必要があります。

2020年には、マイナンバーカードを取得した人を対象に、プレミアム付きポイントを発行する計画もあります。

このような優遇策は、条件に該当したら、有効に活用したいものです。

③住宅購入のための優遇策

消費税の引上げで影響が大きいのが、住宅の購入です。

2%のアップとは言っても、もともとの金額が大きいので、購入価格は数十万円の上昇となります。

それだけに、市場が冷え込まないように、いくつもの優遇策を設けています。

 

優遇策を見る前に、不動産と消費税についてチェック!

まず、土地の売買には消費税はかかりません。

戸建ての場合は、建物の価格や建築費だけに消費税がかかります。

マンションの場合も土地の区分所有権に相当する部分には消費税はかかりません。

 

また、中古住宅や中古マンションを個人から購入する場合にも消費税はかかりません。

消費税が8%となるか、10%かは、原則として物件の引き渡しの時点で判断されます。

契約が9月中でも、物件の受け渡しが10月になると、消費税は10%になります。

 

以上のことから、10月以降は新築マンションを中心に販売価格の上昇が予想されます。

土地の割合が大きい戸建てであれば、消費税増税の影響は抑えられますし、中古物件であれば消費税増税の影響を受けません。

消費税増税以降は、築浅で状態の良い中古住宅を探すのも選択肢になります。

 

では、消費税の引上げに伴う優遇策を見てみましょう。

住宅ローン控除

その1つに、「住宅ローン控除」の優遇拡大があります。

「住宅ローン控除」は、住宅ローンを組んで自宅を購入した場合に、年末のローン残高(上限あり)の1%分が、10年間にわたって減税されるという優遇策です。

期間限定の優遇策ですが、景気対策として以前から行われていました。

消費税引き上げ後は、減税期間が13年間となり、一定額を限度として減税が続きます。

その限度は、ローン残高(上限あり)の1%分、または建物の取得価格の2%の1/3分の小さい金額となっています。

要するに、消費増税で上昇した金額の範囲内であれば、減税が3年間延長されるというわけです。

 

物件価格が高いと消費税引き上げの影響が大きいのですが、年収とローンの残高次第で、増税分のほとんどを取り戻すことも可能となります。

減税額を計算しながらローンを組み、返済をしていくことが大切になります。

余裕資金ができたからといって、やみくもに繰上返済をすると、せっかくの恩恵を逃してしまうことにもなりかねません。

すまい給付金

住宅ローン減税は、収入が多く、大きなローンを組んだ人ほど恩恵が大きくなります。

住宅ローン減税のメリットが小さい人のためには、「すまい給付金」という制度があります。

これは、住宅を購入する人に、国が〝お金をくれる〟という制度です。

収入が少ない人ほど恩恵が大きいので、これもよく確認したいものです。

消費税引き上げにともない、基準の収入が拡大されます。

対象となる人の範囲が広がり、給付金額も今までより大きくなります。

それでも、販売価格が上昇することを踏まえると、消費税引き上げ後の方が安上がりとは言えませんが、負担の増加がかなり抑えられることは確かです。

これも期間限定の制度ですので、注意が必要です。

自動車購入のための優遇策

住宅の購入金額が高いのは自動車です。

自動車も2%の消費増税は数万円の負担増になります。

さらに、あわせて自動車特有の税制も変更になりますので、確認をしておきたいところです。

まず、自動車取得税が廃止となります。

自動車を購入した際に、消費税と自動車取得税の2つの税金がかかることが問題とされていたため、それを解消した形ですが、新たに「環境性能割」という税金が設けられましたので、実際は減税となっていません。

「~割」といいうと、割引される印象を受けます。

確かに燃費性能が良い車種は割引となりますが、現行の「エコカー減税」も廃止されるため、自動車取得税が名前を変えたと言った方がよいでしょう。

 

前述しましたように、環境性能割は燃費性能が良い車種ほど税率が低くなっています。

さらに、1年間は消費増税による影響を抑えるために、新たに設けられた税率よりも1%程度引き下げられます。

10月以降に購入した普通乗用車は、毎年払う自動車税も変わります。

名前が「自動車税(種別割)」となり、減税となります。

減税の程度は排気量で異なり、1,000cc以下であれば4,500円の減税となりますが、25,000cc超の減税額は1,000円に過ぎません。

毎年かかる税金ですので、排気量が小さい車種であれば、消費税増税後に購入した方がかえってお得になるケースもあります。

なお、軽自動車は「自動車税(種別割)」となりますが、税率は今までと変わりません。

消費税増税後は2020年9月までの間に、できるだけ燃費性能が良く、排気量が小さい車種を購入するのがよいでしょう。

 

もちろん、販売各社によって値引きの状況は変わってきますので、一概には言えません。

ちなみに、自動車についても、受け渡し、つまり納車の時期で消費税の税率が決まります。

【まとめ】消費税の引き上げに備える

住宅や自動車などは、条件によっては消費税引き上げ後に購入した方がお得になるケースもあります。

また、5%還元が適用されるキャッシュレスポイントの対象店舗であれば、その期間はかえってお得になります。

それでも、全体としては増税分だけ物価は上昇します。

保存が効くものであれば、消費税増税前に〝買い貯め〟しておくとよいでしょう。

 

また無理して対策を取るよりは、家計の見直しをする方が節約効果は高いです。

消費税の引き上げは、家計の見直しをする、よい機会と考え、計画的なお金の使い方を習慣づける機会ととらえましょう。