2019年10月から始まる消費税増税。

当サイト(カードローンの巨匠)では、5回にわたってファイナンシャルプランナーを中心とした専門家の方々に、消費税増税に関するお話を伺いました。

第五弾は、サマーアロー・コンサルティング代表の浦上登さんに「消費税が10%になるにあたっての生活防衛」について解説してもらいます!

【今回増税について教えてくれた方】

サマーアロー・コンサルティング代表の浦上登さん。

ファイナンシャル・プランナー(CFP)、証券外務員第一種
大手重工業メーカーで一貫して海外ビジネスを担当、その後、保険部門に移り、企業保険ならびに個人向け保険を担当。

現在は、FPとして種々の相談業務、大学の特別招聘講師、セミナー講師を行いながら、資産運用、税制、保険等多様な分野で金融記事の執筆を行っています。

金融記事執筆にあたっては、生活に密着したお金の話を分かりやすく伝えることを最優先に考えています。

HP:サマーアロー・コンサルティング

はじめに

今年の 10 月 1 日から消費税が 8%から 10%に上がります。

安倍政権になってから、2 回の引き上げ延期をへて、ついに税率がアップされることになりました。

生活者の観点から言えば増税は決していいことではありません。

この税率引き上げが私たちの生活に与える影響とその影響を出来る限り少なくする方法について、述べてみたいと思います。

そもそも消費税ってなんのためにあるの?

そもそも消費税とは何でしょうか?皆様になじみの深い所得税と比較して消費税とは何かを考えてみましょう。

 

所得税が皆様の稼ぎに応じて支払う税金であるのに対し、消費税は皆様が購入するものやサービスに対し掛けられる税金です。

所得税は自分の所得に応じて稼いだ本人が直接支払いますが、消費税は消費者が購入するものやサービスに対し課税されます。

納税者は、ものやサービスを販売した業者で、価格に転嫁された税金は間接的に消費者が負担することになります。

ですから、所得税を直接税といい、消費税を間接税といいます。

 

直接税には、所得税、相続税、固定資産税等があり、間接税には、消費税、酒税、たばこ税があります。

また、所得税が給与所得や事業所得などの「所得」に対して掛けられますが、消費税は事業者の行う商品の販売やサービスの提供等の「取引」に対し、その販売者に対し課税されます。

以上が所得税と消費税の主な違いです。

icon-hand-o-right まとめると・・・

所得税が納税者本人へ個別にかけられるのに対し、消費税は消費者全員に包括的にかけられます。

消費税の引き上げは、具体的には物価の上昇という形で、社会の構成員の家計に影響を与えることになるのです。

消費税が引き上げられるとすべての物価が上がるのか?

それでは、消費税が引き上げられるとすべての物価が上がるのでしょうか?

そうではありません。

我々の消費の対象となっているものは、消費税のかかるものとかからないものに分けられます。

すなわち、消費税のかからないものについては消費税の引き上げを心配する必要はないのです。

消費税のかからないものは?

消費税の対象とならないものは 3 種類に分けられます。

その中で、金額が比較的大きなものを消費者の観点から解説します。

1. 消費税の課税対象外取引(不課税取引)

消費税は「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡や貸付、役務の提供」に対し課税されます。

ですから、上記条件を一つでも満たしていないものは課税の対象にはなりません。

代表的なものを挙げると次の通りです。

  1.  給与・賃金
    従業員の行う労働は事業として行う資産の譲渡等ではなく、給与・賃金は雇用契約に基づく労働の対価とみなされます。
  2. 寄付金・祝金・見舞金・補助金等
  3. 保険金・共済金等
  4. 株式配当金やその他の出資分配金
  5. 心身や資産に加えられた損害に対して受ける損害賠償金

2. 消費税の非課税取引

消費税の対象取引であっても、消費に負担を求める税としての性格からなじまないものや社会政策的配慮から課税しないものを消費税の非課税取引といい、消費税の対象から外されます。

icon-hand-o-right 非課税取引の対象となるもの
  1. 土地の譲渡及び貸付け
  2.  国債や株券などの有価証券等の譲渡
  3.  銀行券、政府紙幣等支払手段の譲渡
  4.  預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等
    預貯金や貸付金の利子、信用保証料、合同運用信託や公社債投資信託の信託報酬、保険料、保険料に類する共済掛金などは非課税です。
  5.  郵便切手類の譲渡、印紙の譲渡等
  6.  商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
  7.  国等が行う一定の事務に係る役務の提供
    一定の事務とは、登記、登録、特許、免許、許可、検査、検定、試験、証明、公文書の交付等なので、それらの発行手数料は非課税となります。
  8. 外国為替業務に係る役務の提供
  9. 社会保険医療の給付等
  10. 居宅サービス、施設サービスなど介護保険サービスの提供
  11. 社会福祉事業等によるサービスの提供
  12. 医師、助産師などによる助産に関するサービスの提供
  13. 火葬料や埋葬料を対価とする役務の提供
  14. 義肢、盲人安全杖、義眼等、一定の身体障害者用物品の譲渡や貸付け
  15. 学校教育法に規定する各種学校等の授業料、入学検定料、入学金、施設設備費、在学
    証明手数料等
  16. 教科用図書の譲渡
  17. 住宅の貸付け

3. 消費税の免税取引

輸出取引-消費税は内国取引に対して課税されるので外国で消費されるものについては課税されません。

icon-hand-o-right 免税取引になるもの
  • 商品の輸出
  • 国際輸送
  • 国際郵便
  • 国際電話

 

※以下の取引には従来も今後も消費税はかけられないので消費増税は関係ありません。

ただし、どこまでが消費税がかからないかについては、具体的に確認する必要があります。

また、自動車保険料のように、消費増税のため、修理費等の費用が増えるため値上げするものもあり、注意が必要です。

消費税のかからない取引(主なもの)

  1.  不動産関連
    土地の購入・借地・賃借、住宅の賃借
  2. 医療関連
    社会保険医療(含む医薬品)、
  3.  教育関連
    学校の授業料・入学金等、
  4.  金融関連
    保険料の支払い・保険金の受取、国債や株券などの有価証券等の購入

 消費税率引き上げに対する緩和策を活用しよう!

消費税率引き上げは困ったものですが、今回は、ほとんどが時限処置ですが、様々な緩和策が準備されています。

これからそれらの緩和策の紹介と活用法について説明したいと思います。

消費者としてはこれらの緩和策をフルに活用することが生活防衛につながります。

(1) 軽減税率

今回の消費税引上げは一律ではありません

正確にいうと、消費税率 10%のものと消費税率を据え置く 8%のものとの複数税率に移行するということになります。

消費税率を据え置くものは軽減税率とよばれ、飲食料品と新聞が対象になります。

軽減税率の対象品目は次の通りです。

  • 飲食料品(テイクアウト・宅配は軽減税率対象だが、外食、ケータリング、酒類等は含まれず、増税となる。)
  • 新聞(定期購読契約に基づき週 2 回以上発行されるもの)

生活費の中でも比率の大きい飲食料品の消費税率が上がらないのは、生活防衛のためにはメリットといえるでしょう。

 

ただし、軽減料率制度には次の点に注意が必要です。

  • 飲食料品には、外食・ケータリング、酒類を含まないので、税率がどちらになるかを決めるため、購入時に細かいことを確認されることがある。
  • 具体的に言うと、スーパーでパンを買うと、家に持って帰るのか、イートインで食べるのかを確認される。
    →家に持って帰る場合は 8%だが、イートインで食べると 10%になる。

要するに、境界領域では、どちらになるかを決めるために、手間がかかるということです。

ですが、少しくらいの手間がかかっても、10%の税金を支払うよりは、ましといえます。

(2) プレミアム付き商品券(時限処置)

2019 年 10 月から 2020 年 3 月までの時限処置ですが、住民税非課税者と 3 歳未満の子育て世帯の方は、一人当たり 25000 円の商品券を 20000 円で購入することが出来ます。

世帯主が住民税非課税者で、非課税者である家族(配偶者、子 2 人)を世帯主が扶養している場合は、25,000 円x4 人分=100,000 円分の商品券の購入が可能です。

2016 年 4 月 2 日から 2019 年 9 月 30 日までに生まれた子供がいる家庭は、25,000 円x(子供の人数分)の商品券の購入が可能になります。

(3) キャッシュレス決済に関するポイント還元(時限処置)

これも 2019 年 10 月 1 日から 2020 年 6 月 30 日までの時限処置ですが、対象店舗で

  • クレジットカード
  • デビットカード
  • 電子マネー
  • スマートフォン

を使って支払うと2%から 5%のポイントが還元されます。

対象店舗は中小企業または個人事業主が経営する小売・飲食・宿泊等の店舗もしくはコンビニやガソリンスタンドなどのフランチャイズチェーンで、前者が 5%還元、後者が2%還元となります。

対象店舗にはステッカーを付けてわかりやすくします。

百貨店などの大企業で販売するものについては還元なし、また、消費税対象外の品目(医療費、薬代、授業料、株式、商品券等)や、別途支援を受ける住宅、自動車等はポイント還元の対象外となります。

 

またマイナンバーカードの所有者が自治体ポイント*を購入すると一定額上乗せされる制度も進んでいます。
*小売店での買い物に使えるポイント

(4) 自動車購入への支援

1 自動車税(種別割)の税率引下げ(恒久減税)

2019 年 10 月以降に初回新規登録を受けた自家用自動車は自動車税が毎年減税になる。
2000cc 以下の軽自動車・小型車で 3500~4500 円/年、2000cc 超で 1000~1500 円/年。

総排気量 減税額(年額)

1000cc 以下 4500 円
1000cc 超~1500cc 以下 4000 円
1500cc 超~2000cc 以下 3500 円

2000cc 超~2500cc 以下 1500 円
2500cc 超 1000 円

2 自動車税(環境性能割)*(時限処置)

2019 年 10 月 1 日から 2020 年 9 月 30 日までに取得した自家用の乗用車(登録車・軽自動車)は、新車・中古車とも、税率が 1%軽減される。
*2019 年 10 月から自動車取得税に代わって導入する購入時の税。

税率は自動車の燃費性能に応じて、自家用の登録車は 0~3%、軽自動車は 0~2%。

(5) 住宅購入に対する支援

1 住宅ローン減税の拡充(時限処置)

2019 年 10 月 1 日から 2020 年 12 月 31 日までに取得し、入居した住宅(新築・中古住宅の取得およびリフォームで消費税 10%で購入したもの)については、住宅ローン減税*の控除期間を 3 年延長し、延長された 3 年で消費税が増加した 2%相当額(最大)を税額控除という形で返還する。

延長された 3 年間の税額控除のやり方は次の通り。

各年度末における住宅ローンの借入残高の 1%または建物の購入価格x2%÷3 のどちらか小さい方が税額控除の対象となる。

注意事項)
各年度末における住宅ローンの借入残高の 1%<建物の購入価格x2%÷3 の場合は、消費税の値上がり分 2%がすべて返還されないことになるので注意が肝心です。

また、対象期間が 2020 年 12 月 31 日までと短いので、増税後 1 年 3 か月以内に取得し、入居する必要がある点にも気を付ける必要があります。

 

2 すまいの給付金の拡充(時限処置)

収入が一定レベル以下の方(650 万円/年程度以下)が対象で、2021 年 12 月 31 日までに新築・中古住宅を取得し、入居した場合に適用になります。

消費増税後は給付額は最大 50 万円まで引き上げられ、消費増税前と比べ 10~40 万円増額となります。

  • 収入
  • 住宅ローンの有無
  • 年齢等

で給付額が異なっており複雑です。

 

3 次世代住宅ポイント制度(時限処置)

新築住宅の取得、リフォームで 2020 年 3 月 31 日までに契約締結した方が対象で、省エネ等一定の性能を有する住宅の新築やリフォームに対し、商品と交換可能な以下のポイントを付与する制度です。

  • 新築住宅の場合:最大 35 万円相当のポイント
  • リフォームの場合:最大 30 万円相当のポイント

 

4 住宅取得等資金にかかる贈与税の非課税枠の拡大(時限処置)

2019 年 4 月 1 日から 2021 年 3 月 31 日までに、新築・中古住宅の取得およびリフォームに関する契約を締結し消費税 10%で購入したものに贈与した場合、贈与税の非課税枠を 400 万円から 1800 万円拡大し、1200 万円から 3000 万円にします。

注意事項)
本件は父母、祖父母など直系尊属からの贈与に限ります。

2020 年 3 月 31 日までに契約を結んだ場合、最大 3000 万円の非課税枠が受けられますが、その後、2021 年 3 月 31 日にかけて、非課税枠が最大 1200 万円まで減額されるので、大きな金額を贈与しようとした場合は、早めに贈与契約を結ぶ必要があります。

まとめ

消費税が 8%から 10%に引き上げられるということは、物価が 1.85%上昇することになります。(1.10/1.08=1.0185)

給与生活者の方は、その分給与が上がらなければ、生活が圧迫されることになり、年金の上がる見込みのない年金生活者の方はその分生活が圧迫されることは間違いありません。

ただ、今まで検討してきたことを復習すると次のようになります。

icon-hand-o-right 今までの復習
  1.  消費税のかからないものがあり、それらの費用は原則消費増税の影響を受けない。
    恒常的な出費として、医療費、授業料・入学金等の教育費
    不動産関連として、土地の購入、住宅の賃借費
    金融関連として、保険料の支払い・保険金の受取、国債や株券などの有価証券等の購入費
  2.  軽減税率により飲食料費は消費増税の影響を受けない。
  3.  時限処置のものが多いが、政府が消費増税に関する緩和策を用意している。
    不動産関連
    住宅ローン減税・住まいの給付金の拡充
    自動車関連
    自動車税の減税
    プレミアム付き商品券・キャッシュレス決済のポイント還元

そうすると、物価上昇率は 1.85%よりは低くなります。

それに加え、政府の用意した緩和策をフルに活用して、生活防衛をするということになると思います。